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2009年 06月 02日
『サッカーという名の神様』
「これすげーいいよ」

2年前の夏、爽やかな日射しが注ぐ味スタで、彼は突然、オレに押し付けるように、ある本を渡した。
渡すやいなや、オレの反応なんかそっちのけで、彼はさっさとどこかに消えてしまった。

「まあ、時間があったら読んでみるか。いや読まないかもな」

彼が手渡したのは、近藤篤という写真家による『サッカーという名の神様』という新書だった。
著者紹介を読むと『木曜日のボール』とある。
これは知ってる。あの雑誌の、あの写真を撮ってた人か。

それにしても『サッカーという名の神様』とは、なんてありふれたタイトル…
サッカーの神様は残酷だとか、劇的な勝利だとか、描かれているのは、どうせそんなところだろう。
そう思いながら、ページをめくってみた。

予想は大きく裏切られた。
そこに書かれていたのは、世界中にいる、オレたちだった。
選手たちにセレソンへの愛がたりないと憂うブラジル人。
誰もが幸せそうに笑っていた、W杯最終予選のトリニダード・トバゴ。
そして日本。自分たちのクラブを応援する人たち。

そこには、こんな文章が書かれていた。

サッカーボールは日なたのほうばかりに転がっていくわけではなく、
日陰にも、水たまりにも、容赦なく飛び込んでいく。
自分の人生の中にサッカーボールを抱え込んだからには、
ボールの行方に人生が左右されるのは仕方がないことだ、と。

オレはこの文章を読んで、一気にこの本が好きになった。
書店で買うと毎日のように持ち歩き、繰り返し読んだ。
ボールの行方に左右される人生が、さらに楽しくなっていった。

そして先日。
この本をオレに押し付けた彼は、可愛らしい新婦の隣で、たくさんの人に祝福されていた。
お相手は、東京サポーターだ。
東京サポーターが東京サポーターを祝う、笑いの絶えない披露宴だった。

オレはサッカーという名の神様のことなど忘れ、凡庸な祝福の言葉を並べた。
この本のことを思い出したのは、自宅に着いた夜だった。

まあ、思い出したついでだし、せっかくなんで、書き記しておくことにする。

サッカーという名の神様、彼らを、そしてオレたちを出会わせてくれて、ありがとう。
そしてTくん、あの時『サッカーという名の神様』を押し付けくれて、本当にありがとうな。

by tokyo-boys12 | 2009-06-02 03:02 | FC東京


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