先週の「サッカーダイジェスト」。
増嶋のインタビューに惹かれて、買ってみた。
新監督について触れてるというから。
あのガンバ戦の心の内を話しているというから。
しかし、僕の心を鷲掴みにしたのは、そんなことでもなく。
増嶋の爽やかな笑顔でも、なかった。
中村亮である。
彼はトライアウトに参加していた。
彼についての記事は一切なかったが、トライアウト終了後
ピッチを引き上げる選手たちの写真の中に、その姿はあった。
その表情が、コンビニで立ち読みしていた僕の目を捉えて離さなかったのである。
彼は、僕が一度も見たことのない、苦悶の表情を浮かべていた。
FC東京の練習着を身につけて。
苦しそうでもあり、悔しそうでもあり。
明らかに「すべてを出し切って満足」という表情には、受け取れなかった。
しかし闘っている男の表情でもあった。
それは僕の見る、中村亮の初めての表情だった。
スタジアムのコンコースで、握手をした。
小平で、Bチームの左サイドを勇ましく駆け上がっていた。
そしてある時、向こうから挨拶してもらったこともある。
それがいったい、何だというのだろう?
時に僕らは、監督や選手のことを、理由知り顔で話す。
「あいつはスタミナがない」「あいつはやる気がない」「あいつはダメだ」…。
そして何も知らずに僕らはただ「がんばってください」と右手を差し出す。
僕たちは選手の何を知っているというのだろう。
知っているのは、人間としての、いや選手としてのほんの一部でしかないはずなのに。
中村の表情は、忘れかけていたそんなことを、思い出させてくれた。