ルーカスは一度東京を去った。
まるでチームの得点力不足の責任を取らされるように。
プロとしては当然かもしれない、けれどファンとしては、
「スマイルだけじゃ点は取れない」
そう言われているみたいで、
僕はとても悲しくなったのを覚えている。
一転、アモローゾとの契約に失敗したフロントは、
ルーカスを残留させる意志を見せる。
もちろんアモローゾに期待していたのは、得点力だったろう。
ルーカスはアモローゾではない。
献身的なディフェンス、ポストプレー、
ボールキープも彼の持ち味だ。
でも彼はゴールという結果を示すしかない、そう思っていた。
だから僕は、ずっと待っていた。
ルーカスがゴールを決めるまで、ずっと待っていた。
あのTシャツを着て、ずっと待っていた。
ひとつの言葉をのみ込んで、ずっと。
前半22分、鮮やかなループシュートが、ゴールに吸い込まれる。
その瞬間、僕は叫んでいた。ここから彼に届くはずもない。
でも叫ばずにはいられなかった。
「おかえり、ルーカス!」
これからもよろしく。
もっともっと、東京で、ゴールを。